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イラクに根強い文化的抗体

■安倍首相退陣

水曜日、「安倍首相退陣」の突然のニュース報道…驚くと同時に、無責任さを感じた。
首相としてやるべきことを道半ばに、政権を投出してしまったように見える。
自らが掲げた政府公約を実現するため全力で臨み、それで、矢折れ刀尽きて辞めるというのなら、私たち国民も納得しようというもの。
解散して、国民に真を問うべきと思うのです。

父は外務大臣などを務め、病に倒れ、総理になる夢を果せなかった安倍晋太郎。
祖父は、日米安保条約を締結した岸首相。
大叔父は沖縄返還を実現した佐藤栄作首相。
血筋の良さで総理になったものの、したたかさや、しぶとさに欠ける、二代目の弱さがもろに出てしまったようです。

引き換え、国際社会での責任の重さでは、安倍首相の比ではない、米国ブッシュ大統領。
‘04年11月、大統領に再選された後、ブッシュ政権自ら、「イラクには大量破壊兵器は元より無かった。 そのことは1998年の時点で知っていた。」と弁明して、国際社会の批判に耐え、しぶとく政権を維持している。
器の大きさが違うようです…。



【吉村外喜雄のなんだかんだ - 191】
~歴史から学ぶ~
「イラクに根強い文化的抗体」

米国の大統領選挙の最重要課題として、米国民の43%が「イラク戦争」を挙げる。
現政権のイラク政策の泥沼化は、「協和党政権に勝ち目のない」状況になりつつある。
ブッシュ大統領は、「撤退すれば大災難になる」と述べ、民主党のヒラリー・クリントン候補は、「大統領が戦争に幕引きできないなら、 私がやる」と、こぶしを振り上げる。

8/26 読売「白熱・大統領選挙」より

サマワに駐留していた日本の自衛隊。
何とか役目を終えて1年を経た現在もなお、激しく住民同士が宗派抗争を繰り広げ、ゲリラによる自爆抵抗がとるように繰り返される。
そんなイラクの情勢に、「勝利」への明確な展望が示せずに悩むブッシュ政権。
米政府高官は、「アフガニスタンやイラクで民主化が進んでいる」と、輝かしく語る。
しかし、アフガニスタンやイラクの国民が、米軍の占領を心から嫌っていることを知っている現地の司令官は、両国を民主化することなど 「馬鹿げた幻想である」と言っている。
アフガンやイラク人の体内には、過去二千年の歴史がDNAとなって、キリスト教徒白人に対する非常に強い「宗教的・文化的抗体」がある。
それが、自国に泥足で踏み込んできだアメリカ人と、その仲間の国々に対し、自国内からの早々の立ち退きを迫るのです。

イラクの現地司令部の掲示板には、1918年当時、アラブの兵士たちを訓練していたアラビアのロレンスが、 当時の実戦から学んだ"教訓"が張り出されている。
ロレンス曰く、「自分で完全にやろうとするよりは、彼らに、不完全ながら自らやらせる方がよい。それは、 歴史的伝統を誇る彼らの自尊心を満足させる、彼らのやり方である」と…。
昨年BSテレビで、「アラビアのロレンス」完全復刻版を見た。
四十数年ぶりに見たその鮮烈な映像とストーリーは、強烈な残像となって今も残っている。

♪砂の海を真紅に染める巨大な太陽を眺め、一人のアラブ人がロレンスに言った。
  「砂漠を楽しめるものは2つ以外にない。"ベドウイン族と神々"だけだ。
  ベドウインはラクダの背で、砂漠を一日に百キロ移動できる…。
  それ以外のよそ者には、砂漠は焦熱の地獄にしか過ぎない…。」

そのロレンスは、誰もが不可能と思われた砂漠を横断し、奇襲を仕掛けて、トルコ軍を背後から打ち破った。
後に鬼神と言われ、その名を馳せることになる。
シカゴから来た記者が、部族長と同じ白装束を身にまとうロレンスに質問した。
「あなたは、砂漠の何に魅せられたのか…?」
しばらく考え込んだロレンス、「清潔さだ」と答えた。

ロレンスの英雄的勝利の本質は、この「砂漠の清潔さ、純潔さ」にある。
アラブ人は白を好む…彼も白を好んだ。
白は世俗を超えたイメージであり、「清潔さ」そのもののイメージにつながる。

本名トマス・エドワード・ロレンス(1888~1935)。
英国の探検家で考古学者、そして詩人。
そのイメージは、インディ・ジョーンズが重なる。
第一次大戦中、情報将校(大佐)として、アラブ独立のためにゲリラ戦を指揮。
退役後、交通事故で亡くなったのは、何とも寂しい。

ロレンスには"無私の精神と詩的情熱"があった。
それ故に、アラブ人の「宗教的・文化的抗体」を避けて、アラブの人たちの心に溶け込むことが出来たのです。

ダマスカス陥落の歓喜の夜、独り、共に戦ったアラブの戦士達から離れ、異国の人々の祈りを遠くに聞きながら、 「あの殺りくが悲しいのは、自分一人だけだろうか。そして、異国で聞こえてくる祈りの言葉の、なんと無意味なことか…」と、つぶやいた。

石川県日英文化協会理事 木谷 奏「イラクに根強い文化的抗体」

ロレンスは新生国家樹立ため、国中の部族長を集めた。
一週間近く激論が戦われたが、己の部族の利益を繰り返すばかり。
理想とした統一国家樹立は叶わず、はかない夢に終わった。
そして今また、歴史は繰り返す…。

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