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落語・ふだんの袴

江戸小噺「出火御礼」

勘当されていた道楽息子が、親の家の近く

火が出たと聞いて、飛んで帰って、
死に狂いで家財道具を運び出そうとする
ので・・
息子の気の変わりようを喜んだ父親が・・
その場で勘当を許してやった。
息子喜び・・
「おっかさん、羽織と袴を出しておくれ」 
と頼むので、
父親が・・
『この火事騒ぎのさなかに、
             どこへ行くつもりだ?』
と言うと・・
「ちょっと、火元の家へ
                        お礼に行って参りま
す」

                    山住昭文「江戸のこばなし」
 
 
1179 【吉村外喜雄のなんだかんだ】
~ことば遊び~ 「落語・ふだんの袴」
 
落語の「オウム」というジャンルから、少々おめでたい八五郎の人まね噺です。
古典落語の主役は、お人好しで正直者、間の抜けた人物が多い。
「八っあん、熊さん、松つぁん、竹さん、梅さん」・・長屋のご隠居に物を尋ねに来る 若い衆です・・八っあんの出番が一番多いようです。

ボ~ッとしていて、ちょっと抜けている「与太郎や八五郎」・・おバカキャラです。 ふにゃふにゃと頼りなく、いろいろ問題を起しますが、愛すべきキャラクターです。

落語に登場してくる「御隠居さんや大家」も大切なキャラクター。
相談ごとは「お世辞の言い方」だったり、「婚礼での挨拶や、余興のやり方」だったり、 懇切丁寧にアドバイスしてくれる・・が、肝心の教わる方がだらしがなくて。

♪上野広小路の、御成(おなり)街道に面した小さな骨董屋。
ある日、主人が店で探し物をしていると・・
顔見知りの身分の高そうな侍が、ぶらりと尋ねてきた。
 
この侍、年は五十がらみ・・黒羽二重に仙台平の袴。
雪駄履きに細身の大小を差し、なかなかの貫録。
谷中へ墓参の帰りだという。
 
出された煙草盆で、まずはゆう然と一服するが・・

煙草入れは銀革、煙管も延打(のべ)で銀無垢という、たいそう立派なもの。   
そのうち・・ふと店先の掛け軸に目を止めた。
「そこに掛けてある鶴は、見事なものだのう」

『相変わらず、お目が高くていらっしゃいます。
  あたくしの考えでは文晁(ぶんちょう)と心得ますが・・』
「なるほどのう・・さすが名人じゃ」
 
惚れ惚れと見入っているうち・・思わず煙管に息が入り、掃除が行き届いているから、火玉がスッと抜けて、広げた袴の上に落っこちた。
『殿さま、火玉が・・』
と骨董屋が慌てるのを・・少しも騒がず払い落とし

「うん・・身どもの粗相か・・許せよ」
『どういたしまして・・お召物に焦げキズは?』
「いや、案じるな・・これは、いささかふだんの袴だ」とおうようなもの・・
お供の者と帰って行った。
 
一部始終を見ていたのが、頭が少々おめでたい長屋の八五郎。
侍のゆう然とした応対に、すっかり感心し・・
自分もそっくりやってみたくなったが・・職人のことで、袴がない。
 
そこで、大家に談判・・ようやくすり切れたのを一丁借りだし、
上は印半てん・・下は袴という珍妙ななりで、骨董屋へとやってくる。
 
店の主人が不審がるのをかまわずに、床几に腰かけ、さっそく得意に、一服やりだしたはいいが・・
煙管は安物のナタマメ煙管・・刻み煙草は粉になっている。
それでも、どうにか火をつけ・・先ほどの武士と同じ挨拶をして・・
 
「あの隅にぶる下がってる鶴ァ・・いい鶴だなあ」
『これはどうも・・お見それしました・・文晁(ぶんちょう)と心得ますが』
「冗談言うねエ・・文鳥ってなあ・・もうちっと小さい鳥だろう ・・鶴じゃねエか」
これで、完全に正体を見破られる。
本人、お里が知れたのを気づかずに、盛んに「いい鶴だいい鶴だ・・」と、 うなりながら煙草をふかすが・・
煙管の掃除をしていないから、火玉が飛び出さない・・
 
悔しがって、プッと吹いた拍子に・・火玉が舞い上がって、袴に落ちないで・・頭のてっぺんに
『親方・・いけません、頭ィ火玉が落ちました』
「なあに・・心配すんねエ・・こいつは、ふだんの”頭”だ」

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