落語・親子酒
正月休みの一週間、バリ島のリッツ・カールトンなどの高級リゾートホテルが集まる、
ビーチ・ジンバラに宿泊。スキューバーダイビングと観光を楽しみました。
【吉村外喜雄 - 206】
~ことば遊び~「落語・親子酒」
あけましておめでとうございます。
昨年の暮れ、身近にお付き合いしている友人…公の場で突然、禁酒を宣言した。
お酒を呑む機会が最も多い年末年始に、あれだけ好きだったお酒を絶ったのです。
心に期するものがあってのことでしょうが…驚きました。
そこで、年初め最初のメルマガということで、お酒に絡んだ落語小噺を一席…
♪親父と息子、二人そろっての大の酒好き。
ところが息子は酒で失敗をしてばかり。親父は、息子に酒をやめるように言う。
その代わり自分もやらないと、親子で禁酒の約束をした。
しかし、我慢できるのも二、三日まで…。
息子が年始まわりで出かけたある寒い日の晩…
「おい婆さんや、何か身体が温まるようなものはないかいな…」
『くず湯でも飲みますか?』。優しい女房は心を鬼にしてとぼける。
「もっとほかにあるだろう。なんか、ピリっとして温かくなるもんが…」
『唐辛子ですか?おじやかなんか?』
猪口を口に運ぶ真似をしても、知らんぷりをするので、
「頼むから一杯だけ。なに…倅がまだ帰って来ない」
とうとう根負けした女房は、お銚子一本差し出す。
こうなると、一杯で済むわけがない。あと一本、もう一本。
しまいには「持ってこ~いてんだ!」
やがて、べろんべろんに酔っ払ったところへ、息子が帰宅
『お父さん、ただいま帰りました』あろうことか、息子も泥酔状態。
乱暴に襖を開けると、中へ倒れ込んだ。
『山田さんの家(うち)に行きましたら、丁度いいところに来た、正月だから一杯やって行けと言われまして…。
親父と約束をしているのでと断ったら、以後出入りを止めると言われました。
あたし、怒っちゃいましたよ。たとえ出入りを止められても、男と男の約束を破ることはできません、と言ったら、「えらい!
その心意気が気に入った。その意気でもって一献いこう!」となりまして、結局二人で二升五合あけちゃいました。
やはり好きなものは、なかなか止められませんね…お父っあん』
ろれつの回らない息子に、ろれつの回らない親父が言葉を返す。
「何という情けない男だ、酒を飲むなと言うのは、お前の身を思えばこそ。
この身代をそっくりお前に譲っていこうと思うから、お前に口うるさく言うのだ。
そこをよ~く考えて…」
親父は酔った目で息子をじ~っと見て、「おい婆さんや、倅の顔を見なさい。七つにも八つにも見えるよ。こりゃ化けもんだ。
こんな化けもんには、とても身代は譲れない」
『冗談言っちゃいけません。あたしだって、こんなグルグル回る家は、貰ってもしょうがない…』
学習研究社「落語ギャラリー60」