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大国の政治倫理

■先週末、三重県紀伊・田辺沖で潜った。
当日は快晴。波はおだやかで、水温23度、海中の透明度も高く、
最高のダイビング日和でした。
沖へ向かう途中、右後方に目をやると、白浜温泉のホテル群が、
ワイキキビーチのように、白く美しく輝いていた。

潜水ポイントへ向かう途中の仲間たち


【吉村外喜雄のなんだかんだ - 148
~歴史から学ぶ~
「大国の政治論理」

11月6日、フセイン元大統領死刑判決のニュース。ブッシュ政権は、米中間
選挙終盤の戦いに照準を合わせ、イラク攻撃の正当性を強調した。
しかし、一向に好転しない戦況に嫌気を指した多くのアメリカ人は、一昨日の
中間選挙で、イラクからの撤退を掲げる民主党を支持した。

3年前の2003.3.20、米英両国はイラクに対して先制攻撃を仕掛けた。
2001.9.11同時多発テロ以降、ブッシュ大統領はイラクをテロ支援国家と
名指しし、「悪の枢軸」とまで言い切った。大量破壊兵器を持つイラクは"極悪
人"。 正義の名のもとに、フセイン政権打倒へと、軍事行動を起こした。
その時のブッシュ政権への支持率は、80%に届く…。

米国は、国連の反対を押し切ってイラクを占領した。あれから3年、ブッシュ
が仕掛けた理由なき?戦争。アメリカ、イラク双方の殺戮行為は止まること
なく、罪なき人が沢山死んだ…。

一昨年11月、大統領に再選されたブッシュ。そのブッシュ政権自ら、「イラク
には大量破壊兵器は元より無かった、そのことは1998年の時点で知って
いた」と弁明した。
何故なら、1980年代のイラク・イラン戦争当時から、イラクに核兵器施設を
造ったり、化学兵器の製造工場を建設したのはアメリカ…。
イラクのどこに何がどれだけ貯蔵されているか、サダム政権が知らなくても、
アメリカはすべて知っている…。
(日本の米軍基地内の機密に関して、日本政府が把握できないのと同じ)

従って、アメリカがイラクを去った後も、イラクの大量破壊兵器の有無を誰よ
りもよく知っていたのはアメリカ。何も知らないサダム政権に、「48時間以内
に大量破壊兵器を出せ。出さなければ攻め込んで占領する」と、宣告したのです。
太平洋戦争直前、アメリカが日本に「ハル・ノート」を突きつけたのと、同じ
やり方で…。

中東の石油利権の独占を企む、覇権国家アメリカ。そのためには、どうしても
イラクを手に入れたい…。アメリカを敵視するフセイン政権を倒すには、それ
なりの理由がなければならない。

破壊兵器、無いものを出せと言われても、出せるはずがない。出さないから
占領できた…。もし破壊兵器をすんなりイラク政府が出してきたら、アメリカ
は、イラクを占領できないことになる。
無いことを知っていて、48時間以内に出せと脅すアメリカの謀略…。これが、
世界の政治戦略の基本。黒でも赤と言いくるめるのが優れた政治なのです。

「大量破壊兵器がある」と大騒ぎし、無いことを知りながら国連に要請。国連の
査察団をイラクに送り込んだ。初めから無いものが、見つかるはずがない。
イラク全土となると広い。どこかに隠されているかも知れない。とても全て調
べられるものではない。

国連の報告書によれば、「調べた限り、大量破壊兵器があるという証拠はなか
った。しかし、我々の調査は完璧ではない…」。このような報告書が出されるこ
とを、先刻承知のアメリカだったのです。

当時、パウエル国務長官は、「必ずどこかに隠されている」と、国連安全保障
理事会で、"偽ビデオ"を流して全世界を信じ込ませ、騙した。
ところが、一昨年の選挙時、パウエル自ら、あのビデオは偽モノだったと白状
した。 偽りが判明し、全てが明らかになった。しかし、イラクは既に占領され、
フセインは捕らえられ、犯罪人に…。

増田俊男「変化の年2005年を斬る」より

北朝鮮が核実験をやった。議長国日本が先頭に立って国連を動かし、制裁決
議を可決した。弱小国が核を持ったら、国際社会から徹底糾弾される。
これが大国アメリカがやった行為であれば問題にならない。やったもの勝ちで
ある。
これが国際社会における核保有国、アメリカ・ロシア・中国など、大国の政治
論理である。国際社会の正義は、力の強い国が握っている…。

今の北朝鮮。力も無いのに、軍事力を誇示して黒を白と言い切り、大国に逆ら
い、日本をなめてかかる。約70年前、西欧の列強に加わろうとして、西欧先
進国から孤立し、アメリカと戦うはめになった、当時の日本の姿によく似てい
るのです。

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