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重圧と戦うイチロー(2)

守備の名手イチロー

北京オリンピックでG・G佐藤…なんでもない外野フライを、一度ならず二度までも、捕りぞこねて落球した。
イチロー…外野フライを背面キャッチして、観客からヤンヤの喝采を浴びる。
そんな名手イチローを何度か見た。

背面キャッチ…遊びでやっているわけではない。しかしながら、ボールから目を離し、消えたボールを、 背中にグラブを回してキャッチするのですから、難しい…難度の高い行為には変わりない。

なんでもない凡フライをキャッチする時、走者の方に目がいって、ついボールから目を離し、油断してしまう… そんな気の緩みを防ぐための動作だと、イチローは言う。「結果、お客さんに喜んでもらえるからね…」そんなさりげない言葉を聞くと、 やっぱり天才です…。


【吉村外喜雄のなんだかんだ - 602】
「重圧と戦うイチロー(2)」

メジャーに移籍して8年。イチローは毎年200本以上のヒットを打ち続けた。
その間、首位打者2回、年間262安打のメジャーリーグ記録樹立。
輝かしい記録の数々は、「過去のイチローを捨てる」という、イチローならではの"流儀"から生まれた。
その言葉通り、イチローは毎年、自らのバッティングフォームを変えてきた。

2007年春、これまでとは違う何かを見つけようとしていた…。
自分が過去持っていた"形"を思い返してみると、「よく、あれで打てたな…」って…思う。
「今のところ、終わりがないんですよ…今やっていることが、もしかしたら…
そうじゃないかな…」って、淡い期待を抱きながら…。

2007年のイチローは、何かが違っていた。6月には、25試合連続安打で、自己記録を更新。オールスターでは、 史上初のランニングホームランを記録して、MVPを獲得。
明らかに変わったのは、バッターボックスでの立ち位置…これまでよりも30センチ、ベースから離れて立つようになった。
きっかけは、妻の由美子さんの一言…「ちょっと離れてみたら? 景色変わるんじゃないの…」…素人だから言えること。

そして迎えた9月3日、ニューヨークでのヤンキース戦…マウンドにはメジャーきっての豪腕、ロジャー・クレメンス投手… ライトスタンドに飛び込むホームランで、7年連続200本安打を達成した。

2007年のイチローに、何が起こっていたのか?
時折、プレッシャーに押しつぶされそうになることがある…それを技術で乗り越えてきた。
精神には限界があると思う…もう限界だと思った時もある。
幾度となく、精神的に追い込まれた。重い十字架を背負って、プレーしてきた。
それでも、毎年200本達成してきた…日本では、首位打者を取り続けてきた。

「超えているように見えるよね…でも、超えてないんだよね…」とイチロー。
イチローは、「これまで重圧を乗越えられなかった」と、繰り返す。
だから今年、それを課題にした…かかってくる重圧から逃げないと、プレッシャーがかかる…どうしたってかかる重圧…逃げられない。

だから170安打になった時点で…来た来た来た!みたいな感じなんだよ…
いくぞ…明日から…重圧から逃げずに、自ら仕掛けていく…そんな中から新しいバッティングを見つける…。今、 イチローはかってない大きな挑戦の最中にある。
観客席から見ると、野球は簡単に見える。「こんなにヒット打てるところあるじゃない」…ところがバッターボックスに立つと、穴がない… グラウンド全部守られているように見える。
自分のタイミングで打てたボールは、間を抜けていく。でも、詰まらされた打球は、捕られてしまう。
塁間の距離…絶妙の距離なんだよね…ギリギリ・アウトになるようになっている…信じられない…誰が考えたんだろう…感心します。    ~つづく~

NHKプロフェッショナル 仕事の流儀から

9月17日3安打を放ち、大リーグ記録に並ぶ8年連続200安打をついに達成。
100年以上破られることのなかった、メジャー記録に並んだのです。
~達成した感想は~
「メチャメチャしんどかった。190本になるまでは恐怖だった。今年200本
 越えたのは大きい。次は、メジャー1800安打達成の…208本。
 そして、張本勲が持つ日本記録、3085安打にチャレンジ…残り11試合で
 15本打って、今シーズン中に達成したい…やりたいし、やるつもり。
 絶対超えてやる…」

中日新聞

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