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故事から学ぶ 「無情の情け・・宋襄の陣」

1341 【吉村外喜雄のなんだかんだ 】

故事から学ぶ 「無情の情け・・宋襄の陣」


紀元前8世紀の春秋時代・・周王朝の第一人者、斉の
桓公が死ぬと、宗の襄公は桓公に代わって、諸候の会議
を主催し、諸侯に号令しようとした。

襄公の仁政によって、宗国内をうまく治めていた自信か
らの行動である。


しかし、宰相の子目夷(しもくい)は諌めて「宗は小国
・・小国の分際で、諸侯の盟主になろうとするのは、
禍のもとです」と諫言したが、耳をかそうとしない。


それから何年か後の紀元前638年、宗は鄭(てい)の
国を討った。ところが、この鄭を楚が救ったのです。
楚の行為は、宗と楚が交わした盟約を破る行為であった。


これに怒った宗の襄公は、今度は楚に戦いを挑んだ。

また、子目夷が諌めた・・
「楚と戦っても勝てるはずがない。いたすらに戦争して
はならない。宗は殷の末裔の小国として分に甘んじて
、出過ぎたまねは差し控えるべきです」


ところが、盟約を破った楚の行動を、大義にもとると

考えた襄公は、その年の11月、楚の成王に戦を挑んだ。

5万の兵力の楚と、2万5千の兵力の宗が、

泓水(おうすい)左岸の川原で戦い・・宗は敗れた。


「孫子の兵法」を記述した孫武は・・

兵法の本質は敵を欺くことにあり。
開戦したら速やかに相手を叩いて、勝たねばならない。
宗王襄公の戦場認識の甘さが敗因・・と分析している。


楚の大軍が、淮水(わいすい)支流の泓水を渉ろうとし

たとき、宰相の子目夷は「今なら、行動が思うにならな

い楚軍に対し、有利に戦えます」と攻撃を勧めた。


しかし襄公は「相手の弱みに付け込むのは不義である」

と肯かない。

そうこうするうちに、楚軍は泓水を渉り終えた。

子目夷は「相手の陣形が整わない今こそ攻撃を仕掛ける

べきです」と再度攻撃を勧めた。


公は、これも卑怯な行為になると拒否・・

敵方が十分な態勢になるのを待った。

場所は、泓水の左岸である。
渡河してくる敵を待ち伏せるには、最適である。

一方の楚軍、背後に川を負う布陣を”絶水”といい、

一番忌むべき状況にあった。


相手をそのような窮地に立たせたまま、攻撃することは

、襄公の戦争美学が許さなかった。

この戦い、宗軍が勝ったのなら絵になる・・

しかし、少勢の宗軍が、大軍の楚とまともに戦って勝て
るわけがなく、宗軍は大敗した。

襄公はその時の傷が悪化して、翌年呆気なく他界して

しまった。

宗王は、戦争に勝つという一番大切なことをわきまえず

、無勢が多勢に勝つ、千載一遇の機会を喪った。


最低最悪の軍略で敗れたこの逸話から、

「相手に無益な情け、あわれみをかける」ことを

「宗襄の陣」と言うようになり、今に語り継がれている

のです。

                                               塚本青史著「孫子伝」より


■「泓水(おうすい)の戦」・・その後の戦い


・前632年 城僕の戦い

○ 晋 [戦車700乗・兵三万] 同盟国・・/斉

● 楚 [戦車650乗・兵三万] 〃 ・・陳/蔡

※晋は、奇襲作戦と囮策で、少ない兵で大軍をおびき出し殲滅

宗は6年前、楚に敗れた。宗の王子が仇討をした


・前627年 崤(こう)の戦い

○ 晋 [兵二万] ● 秦 [兵三万]

※中原への進出を謀る秦が、服喪中の晋に攻め込んだ戦い

秦を、狭い谷底へ誘い込み殲滅


・前597年 邲(ひつ)の戦い
○ 楚 [兵四万] ● 晋 [兵四万]

※開戦当初の目的が消滅した晋軍・・
戦意喪失と、将軍の意思疎通の欠如が敗因


・前589年 鞍(あん)の戦い
○ 晋 [戦車800乗・兵七万] 同盟国・・衛/魯

● 斉 [戦車500乗・兵六万]

(政治)、(季節・天候)、の利を味方にし、

指揮官の気迫の差が勝敗を分けた


・前575年 鄢陵(えんりょう)の戦い・・痛み分け

晋 [戦車千乗・十二万] 楚 [戦車530乗・九万四千]

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