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「三方よし」

私が生まれ育った金沢の繁華街香林坊。入江に引っ越してくるまで、47年間住んでいた。自宅の左隣が元第一勧業銀行金沢支店、 右隣が石川銀行本店でした。
両行とも今はもう無い。第一勧銀はみずほ銀行に合併後、売却されて大手資本のホテルが建つ。石川銀行は破産して、APAに売却され、 テナントビルが建つ。

子どもの頃140世帯あった町内会。入江に引っ越す時、わずか4世帯になっていた。商店街の発展のため?と、再開発を繰り返すたびに、 東急109、大和デパート、生保ビルなどの大手資本に取って代わられ、人の住まない町になっていった。 いつしか、 山間の過疎地のようになり、小学校も廃校になってしまった。

子どもの頃、あれほどにぎわっていた商店街。10館あった映画館もすべて廃館。
郊外に移り住んだ後、現在も繁盛しているお店がどれだけあるだろうか? 
その中で、今も益々繁盛しているお店がある。隣の片町商店街で本店を構えていた、”芝寿し”さんである。


[吉村外喜雄のなんだかんだ 第82号
~幸せな人生を歩むために~
「三方よし」

今から二十年も前の話になる。芝寿しの梶谷忠司会長の機転から生まれた、「三方よし」 の体験話し。この美談、今も時折人に話すことがある。

最終便の飛行機で小松空港に着いた梶谷会長。所用を済ませて外へ出たら、金沢行きのバスは既に出てしまい、 タクシーが一台客待ちしていた。
それに乗ろうとしたら、後ろから、新婚夫婦だろうか、大きなトランクを引きずってタクシー乗り場にやってきた。
周りを見渡したらタクシーはこの一台だけ。とっさに「相乗りしましょう」と声をかけ、運転手にトランクを開けさせ、 荷物を押し込んだ。

新婚夫婦も金沢だという。高速道路中ほど、美川辺りへ来たとき、ふと「料金はどうしようか?」と思案した。 タクシー代は三千円くらいだろう…。
元々、一人で乗るつもりだったから、全部自分が持てばいい。が、それでは、新婚夫婦は承知しないだろう。

客は三人だから、一人千円づつ割り勘という方法もある。それでは、自分が一番得をする。納得できない。
また、二組の客と考えれば、千五百円ずつになるが、年齢・収入ともに自分の方がずっと上。なんとなく言いづらい。 しかも相手は初々しい新婚さんである。

しばらく考えた末、後ろの夫婦に提案した。
「タクシー代は三千円だが、お互い二千円ずつ出しましょう。そうしたら四千円になります。そこからタクシー代三千円払うと、 千円残ります。それを運転手さんにチップとして差し上げたらどうでしょうか」。新婚さんは、二つ返事でOKした。

梶谷さんも新婚さんも、金沢へ帰るためのタクシー代三千円は、払うつもりでいた。相乗りしたお陰で千円得したのです。 その上、運転手さんまで、思わぬチップを頂き、ほくほく顔。
世に知られる大岡裁きで有名な「三方一両の」のお話し。名お裁きとして世に知られている。 芝寿しの梶谷会長の場合は、更に一歩進めて、三人とも得をする「三方一両の」。
トンチが利いたお話である。人に話すたびに、ほのぼのとした気持ちになる。

長年、商業界のエルダーとして、商人道を説いてこられた梶谷会長のお人柄を物語る逸話ではないでしょうか。
この美談が世間に広がったのは、タクシーを降りるとき、新婚夫婦がお礼を言った。その時、 「私は芝寿しの梶谷というものです」と、名乗ったことから…。

新婚さんが家に帰った後、新婚旅行の土産話の中で、この体験話しが出た。
そこからこの美談、「三方よし」の逸話として、口伝に広がっていったという。
それが、私の耳にも届いたのです。
次号の”なんだかんだ”では、有名な大岡裁き「三方一両損」のお話しをします。

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