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調和を尊重する社会

春闘の季節。といっても今から四十年も前のお話。毎年四月に決まったように賃上げ闘争のストライキがあり、国鉄や私鉄が止まった。
地元の企業に労働組合が出来ると、上部組織からオルグが送り込まれ、経営者と対峙。赤旗を振ってストライキを敢行した。

当時、金沢で一番の呉服店。毎年の賃上げ闘争に何とかしようと、東京から経営コンサルタントを招いて、 当時はまだ珍しかった衣料品の大型量販店を、福井市、敦賀市などに積極展開した。
ところが、コンサルタントの言うがままの拡大方針が災いして、数年も持たずに倒産してしまった。責任はすべて方針を誤った経営者にある。が、 その引き金になったのは、毎年賃上げを迫った過激な労働組合。

闘争に加担した上部組織、経営危機に陥った会社を救うわけでなく、組合幹部は、自分達の権利を要求するばかり。倒産によって、 生活基盤を奪われた社員さんは可哀そう。組合幹部の使命・役割は、社員の幸せのための組合活動のはず…。
会社がなくなってしまえばそれまでである。

 



【吉村外喜雄のなんだかんだ 第74号】
~日本人のアイデンティティ~
「調和を尊重する社会」

この六月の法律制定で、ブラックバスの輸入と飼育が禁止されることになった。
今回の規制に猛反対なのが、釣り人口三百万人、市場規模一千億円の釣具メーカーや小売店。一方の規制推進派は、湖沼などで漁業を営む全国の漁民。

双方に国会議員が後ろ盾となって、反対、賛成運動を展開。環境省内では、今回の規制対象からブラックバスを外し、決定を半年間先送りするという妥協案を国会に提出し、双方の顔を立てようとした。
ところが小池環境相は、このような官僚主導のやり方に異を唱え、「ブラックバスを規制に加えるように!」 との政治的判断を下した。省内は大騒ぎとなった。
昨年の十二月の話である。

十年ほど前、「ファジー」という言葉が流行った。結論が出せず困っているとき、とことん争って、白黒を決したりするようなことはせず、右でも左でもない、ほどよい「中間」のところで丸く治めようとする。
日本人の知恵である。

今、竹島の領有権が騒がれている。韓国は西欧的。たとえ日本との関係が悪化しようとも、はっきり自国の利益を優先し、主張すべきところははっきり主張する。外交とは、本来そういうものであろう…。
日本政府はといえば、「波風を立てないように…」と,日本の権利主張はあいまいのまま。あくまで調和を優先し、相手国へ気配りを優先する。きわめて日本的で、外交下手に見える…。

以下は、小野晋也「日本人の使命」からの抜粋です。

戦後になって、西欧社会の考え方、哲学がいろいろ日本に持ち込まれたが、その弊害の一つに、「勝敗」をはっきりさせようとすることがある。東洋社会の哲学は、相対するものの是非・善悪を、 高い次元で見定めて、事を丸く収めることを由とする。

例を挙げれば、資本家と労働者の対立がある。この二つの立場は、 全く合い反する立場として日本に入ってきた。戦後の歴史において、両者は常に闘争の対象となり、 激しく争ってきた。
日本の社会が成熟してくるにつれ、お互い対立し、相手を打ち負かして勝利を勝ち取ろうとするよりも、 お互いに調和しながら、双方育み合う関係にした方が、良い結果が得られることに気づいたのです。

対立してストライキをして、力ずくでどちらかをねじ伏せるようなことをやり続け、 対立の上に互いが血を流し合ってきた歴史から、お互いが譲り合い、認め合いながら、 話し合いを続ける中から調和し、前進していこうとする、日本人に古来から受け継がれてきた、 和の精神が戻ってきたのです。

このことを学んだのは十年前のある研修。相手を打ち負かすことによって勝ちを手に入れるのではなく、相手も勝つ、 そして自分も勝つ。「共に勝つ」ためには、一歩引くことが大事。そうやって、 双方争わずして互いに目的を達成する道が拓けることを知った。
私が所属する経営者団体が掲げる理念に、「共に栄える」がある。
お客様、仕入先、社員さん、いずれも”三方良し”の共存共栄の精神を旨とする。
それ以前の私の商いに対する考え方は、「勝者か敗者のいずれか」という見方が多分にあった。目から鱗だった。

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