■「全日本落語選手権大会」
昨年9月東京で「全日本学生落語選手権大会」が開催された。
全国の大学・落語研究会から193名が出場し、8名が予選を
通過して決勝に進出…大学落語日本一を競った。
審査委員長は、上方落語協会会長・桂三枝師匠。審査の結果、
創作落語「動物園」を演じた、大阪大学の銀杏亭魚折(ぎんな
んてい うおーり)・青山知弘さんが、頂点の最優秀賞に輝いた。
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惜しくも賞を逃した7人の演目は、今日紹介する「寝床」の他、
「長短」「飴屋問答」「初天神」「だくだく(ブログ645)」など…
創作落語にチャレンジしたのは二人…その一人は、トルコの
留学生で、日本語の難しい駄じゃれを連発しての大熱演だった。
決勝進出8名のうち二人は女性で、8名何れも、プロとして高座
に上ってもおかしくない、実力の持ち主ばかりでした。
755 「吉村外喜雄のなんだかんだ」
~ことば遊び~ 「落語・寝床」
取引先の温泉一泊招待会で、宴会の後二次会会場へ…
ところが、マイクを離さないおじさんがいて、
下手なカラオケに無理やり付き合わされる羽目に…興ざめです。
♪ある大家の旦那もそんな類の一人で、直ぐ他人に”義太夫”を語りたがる…
あまりにも下手なので、誰も聞きに来ない。
だったら、ご馳走を用意してご機嫌をとろうと、
いろいろ準備してから、店の者を長屋に呼びに行かせたが…
ちょうちん屋は開業式の注文がどっさり入って、手が離せない…金物屋は、
寄り合い…小間物屋は、おかみさんが臨月…
豆腐屋は、ガンモドキと厚揚げを120も作っていて大忙し…鳶の頭は、翌朝早く成田に行かなければならない…
以前には、旦那の義太夫で失神した人や、
他所へ引っ越してしまった人もいたというから…必死で断ってくる。
「で…早い話…誰がくるんだ」
『その~誰というのは来ないんで…』
長屋の者がダメなら仕方がない…
店の者に聞かせようと言い出す旦那。
ところが、店の者もそれぞれ二日酔い、脚気、胃ケイレン、神経痛、眼病と、
仮病を使って、出て来ようとしない。
いくら察しの悪い旦那でも、さすがに気がついた。
「わかった! 義太夫が聞きたくないから、みんなで逃げてるんだ。
そんなら義太夫はやめだ…その代わり、長屋一軒残らず追い出し、店の者は全員クビだ」
と言って不貞寝してしまった。
追い出されるとなると穏やかではない。店の者が長屋をもう一回りして、
店子を連れてきた。
『ええ…旦那、長屋の皆さんが義太夫を聞きたいと、集まっていらっしゃいますが…』
なだめたり、すかしたりしているうち、だんだん機嫌が直り、しまいには…
「それほど聞きたいなら…みっちり語ろう」
と、すっかりヤル気に…まるで子どもだ。
長屋の連中…仕方なく、料理や酒を慰めにして我慢している…旦那は大熱演。
しばらくすると、客席が静かになった…感じ入って聞いているのかと見ると、
どいつもこいつも、酒が回って寝ている。
またもやカンカンに怒りだす旦那。
ところが…おや、このさなかに、一人だけ泣いている奴がいるな…
「おお定吉か…お前は見込みがあるぞ…義太夫のどこが悲しかったんだ?」
旦那が尋ねると定吉、今しがた、旦那が義太夫を語っていた床を指差して、
『あそこでございます』 「あそこ? あそこの何が悲しいのだ?」
『あそこは…私の寝床なんでございます』